「どうせ自分なんて…」と言う子が変わる、自信を育てる環境と「ピア効果」の罠
塾の面談で、親御さんからよくこんな言葉を耳にします。 「少しでも偏差値の高い、周りが優秀な環境に行けば、うちの子も刺激を受けて伸びるはず」
これ、教育の世界では「ピア効果(仲間から受ける影響)」と呼ばれていて、確かに素晴らしい効果があります。お互いに切磋琢磨して高め合う、理想の受験ストーリーですよね。
しかし、子どもの性格やメンタルによっては、このピア効果が「最悪の毒」に変貌してしまうケースが後を絶ちません。
褒めるとこだらけの子が、メンタルを病んでいく現実
塾の現場で見ていて、本当に胸が痛む光景があります。 毎日一生懸命に努力して、提出物もきっちり出し、学習意欲も高くて、人間性も素晴らしくて……とにかく褒めるところだらけの子です。ある一定の点数や成績もしっかり取れている、本当に素敵な子。
それなのに、周りのさらに優秀な子たちと自分を比べ、「点数が思うように取れない」というその一点だけで、「どうせ自分はバカだから」と心を折ってしまうのです。
周囲のレベルが高すぎる環境にいるせいで、自分を見失い、メンタルを病んでしまったり、家でヒステリックになってしまったりする子の話をよく耳にします。
真面目で、頑張り屋さんな子ほど、この罠にハマりやすい。なぜなら、教育心理学には「大きな池の小さな魚現象」という言葉があるからです。
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大きな池の小さな魚: 進学校(大きな池)にギリギリで入り、下位に沈んでしまった子。
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小さな池の大きな魚: あえてランクを下げた高校(小さな池)で、トップ層にいる子。
客観的には十分優秀なはずの魚が、周りがクジラばかりの「大きな池」に入ったせいで、「自分はダメなんだ」と錯覚してしまう。これがマイナスのピア効果です。
ことわざで言うなら、まさに「井の中の蛙」です。「井の中の蛙大海を知らず」はネガティブな意味で使われがちですが、
高校受験においては「あえて井の中の蛙にして、そこで圧倒的な『王様(トップ)』にならせた方が、自信がついて結果的に幸せになれるし、将来も伸びる」ということが分かっています。
周りから「すごいね!」と認められる環境に身を置くことで、「自分はやればできるんだ」という自己効力感が育ち、大学受験や社会に出たときに大化けする子がたくさんいるのです。
「良かれと思っての先回り」が、子どもの可能性を狭める
その一方で、最近は我が子が可愛いあまり、つい「甘やかし」や「子離れ」ができずに、親が先回りして進路のレールを敷いてあげようとする親御さんが増えているのも事実です。
「失敗させたくない」「少しでも良い環境へ」という親心は分かります。
ですが、親が守ってあげられるのは、せいぜいこの15歳(高校受験)まで。その先、高校に入った後に溺れて苦しむのは子ども自身です。その時、親が代わりに授業を受けてあげることはできません。
子どもが自分で自分の人生を歩むためには、親の「子離れ」と、子どもの「自立」が絶対に必要です。
高校選びを「自分で」させる
だからこそ、高校選びの最後のステップでは、親が先回りするのをグッとこらえ、必ず「子ども自身に志望校を決めさせて」ください。これが親にとっての最高の「子離れ」の機会になります。
ただし、ただ突き放すのではなく、親として以下の2つの準備と確認だけはしておいてあげてください。
1. 進路の「最低ライン」だけをプロと確認する
学校の偏差値だけで決める時代は終わりつつありますが、子どもが将来進みたい道(大学進学など)がある場合、その学校の授業や環境が「目標に向かうために必要なレベルに達しているか」だけは確認が必要です。ここは大人の目(あるいは塾などのプロの目)でしっかり確認してあげてください。
2. 「小さな池の大きな魚」という選択肢を教えてあげる
子どもは「偏差値の高い学校に行くのが正しいこと」だと思い込んでいます。だからこそ、「あえて少しランクを下げて、そこでトップを走り続ける方が、3年間ずっと主役でいられて、結果的に行きたい大学にも推薦で行けたりするんだよ。そういう幸せな選び方もあるんだよ」と、選択肢の幅を広げてあげてください。
その上で、「あなたが3年間、一番笑顔で、自分に自信を持って過ごせる場所はどこ?」と問いかけ、最後は本人に選ばせるのです。
自分で選んだ道だからこそ、言い訳はできません。「小さな池」であっても、自分で決めて、そこでトップを取った経験は、親が敷いたレールの上の合格よりも100倍、その子の人生の糧(自信)になります。
15歳の今こそ、親としての覚悟の決め時です。 子どもを信じて一歩引き、「我が子が一番輝ける場所」へ自分の足で歩き出すのを見守ってみませんか?